令和7年度(2025年度)「業務改善助成金」の最新情報!助成金額や申請フローなどを解説

「業務改善助成金」を活用されたことはありますか?

「業務改善助成金」は、企業の生産性向上や従業員の離転職防止において大きな助けとなる助成金です。この記事では、令和6年度(2024年度)と令和7年度(2025年度)の「業務改善助成金」の変更点や支給要件、助成額の計算方法などを詳しく解説し、業務改善助成金の最新情報をお届けします。

どのようなものに助成されるのか、また、どのような条件をクリアしていれば助成金の対象となるのかなどを理解し、自社で活用できないかを検討してみてください。申請相談も受け付けています。この記事が申請の検討に役立てられればと思います。

VPくん

突然だが、中小企業向けに「業務改善助成金」という助成金があるのは知っているカ?

経営者さん

そういう名前の助成金があることは知っているけど、具体的になにが購入できるのかまでは知らないな。

VPくん

生産性向上に資する設備投資と事業所内の最低賃金を定められた形で引き上げることによって給付できる助成金なんダ。

経営者さん

へぇ、今より仕事の負担を軽減させて賃金UPもできれば、従業員の離職防止に繋がりそうだね。

VPくん

そうなんだ、ただ、制度は少し複雑なので、よく勉強してから申請する必要があル。今回は、令和7年度(2025年度)の「業務改善助成金」と前年度との変更点なども説明していくゾ。

目次

対象なら活用しなきゃ損!「業務改善助成金」とは?

「業務改善助成金」は、その名前の通り企業の業務改善を実施すると支給される厚生労働省の助成金です。具体的には事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部の助成を受けることができます。

助成額は、最低賃金の引き上げ額や引き上げる労働者の人数などの要素によって決まり、最大600万円が支給されます。助成金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と助成上限額とを比較し、安い方の金額となります。人手不足解消のためのシステム導入や賃金引上げに対し財務的なリスクを抑えて施策を実行できる点がメリットと言えます。

物価上昇に伴い従業員の賃上げが求められる一方、人件費増に悩む中小企業にとって、「業務改善助成金」は救世主と言えるのではないでしょうか。

令和7年度(2025年度)はココが違う!令和6年度との変更点

令和6年度(2024年度)と比較して令和7年度(2025年度)は以下のような変更点があります。

≪変更点≫

・事業主単位での申請上限600万円までになります

・大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外になります

・基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が、「3か月以上」から「6か月以上」になります

・事業完了期限が、2026(令和8)年1月31日※になります
※やむを得ない事由がある場合は、理由書の提出により、2026(令和8)年3月31日とできる場合があります

・事業場内最低賃金によって決まる助成率の区分が「3つ」から「2つ」に簡素化されます

・全体予算が180億円(令和6年)から297億円と大幅に増額されます

業務改善助成金の支給要件

業務改善助成金の対象となる事業者

「業務改善助成金」の対象事業者は、中小企業事業者であり事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内である事業者です。要件を満たした事業者は、工場や事務所など労働者が在籍する事業場ごとに申請することになります。自社が助成金の対象事業者にあたるのか確認をしましょう。

<対象となる事業者>

✓中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)でないこと)

✓事業場内最低賃金と地域別最低賃金(※)の差額が50円以内であること

✓解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

(※)事業場内最低賃金とは:事業場で最も低い時間給。(ただし、業務改善助成金では、雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げていただく必要あり。)事業場内最低賃金の計算方法は、地域別最低賃金(国が例年10月以降に改定する都道府県単位の最低賃金額)と同様、最低賃金法第4条及び最低賃金法施行規則第1条又は第2条の規定に基づいて算定されるもの。地域別最低賃金については、厚生労働省HPで確認可能。

対象となる設備投資は?

業務改善助成金の対象となる設備投資などは、対象事業場における生産性向上に資する設備投資が助成の対象となります。具体的には、POSレジシステムやリフト付き特殊車両のように労働者の作業や労働負荷・時間などの短縮に繋がるものが考えられます。また、物への投資だけではなく、顧客管理情報のシステム化のようなことや国家資格のあるプロによる顧客回転率向上を目的とした業務フローの見直しなどのような経営コンサルティングも対象となります。

自動車やPCなども助成対象になる可能性がある「特例事業者」とは?

購入生産性向上に資する設備投資が助成の対象となる「業務改善助成金」ですが、制度内容を調べていくと、自動車やPC、スマートフォン(タブレット)などの購入は助成対象にならないことがわかります。しかし、「特例事業者」に該当し「物価高騰要件」を満たす場合は助成対象経費の拡充も受けられ自動車やPC購入が認められるケースもあります。

また、物価高騰要件を満たしていなくても「特例事業者」の場合は助成上限額が一般事業者より優遇されるケースもあるので、自社がまず「特例事業者」に該当するのかを確認した上で助成金の申請を進めることが重要と言えます。

ここでは、「特例事業者」の要件を確認しましょう。

①賃金要件申請事業場の事業場内最低賃金が1,000円未満である事業者
②物価高騰等要件原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント(※)以上低下している事業者
(※)「%ポイント(パーセントポイント)」とは、パーセントで表された2つの数値の差を表す単位です。

要するに、特例事業者(②物価高騰要件)に該当すれば、「一定の条件の自動車やPC」等の新規導入が認められるるようになります。ここで気になるのは、「一定の条件」です。更に深堀して、「一定の条件に該当する自動車やPC」とはどのようなものか確認していきましょう。

<助成対象経費の特例>

生産性向上に資する設備投資等のうち、

• 定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車

• PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入

上記のような条件を満たすものであれば助成対象となるので、業務改善助成金を活用して自動車やPC購入を検討している場合は条件をよく確認しましょう。

助成率と助成上限額について

■助成上限

ここまででも説明した通り「業務改善助成金」は、「事業場内最低賃金の引き上げ+(生産性向上に資する)設備投資」がセットで実施される場合に申請ができる助成金です(ただし、実施前に計画が承認されるなどの事前手続きが必要となります)。

業務改善助成金の助成上限は、「引き上げる最低賃金額」と「引き上げる労働者の人数」の2つの要素によって助成上限額が変わります。以下表のように引き上げる最低賃金額が「30円コース」「45円コース」「60円コース」「90円コース」の4種類に分かれており、申請するコースに応じて引き上げ額の策定を行います。


また、申請事業場の規模が30人未満の場合と特例事業者に該当する場合は助成額の上限が拡大される制度です。事業場規模が30人未満の場合、助成上限額は表の一番右の欄が該当し、30人以上の事業者よりも上限額が拡大されていることが分かります。また、特例事業者に該当する場合、労働者数の「10人以上」の区分を選択できます。(10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合。)

なお、引き上げる労働者の人数のカウント方法についても詳細が定められているので、厚生労働省HPの引き上げのルールを確認することをおすすめします。

■助成率と助成率の計算方法

業務改善助成金では助成率申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金によって、助成率が変わります。事業場内最低賃金が、1,000円未満であれば4/5、1,000円以上であれば3/4という率で決まっています。

引き上げ前の事業場内最低賃金助成率
1,000円未満4/5
1,000円以上3/4

また、助成される金額は、「生産性向上に資する設備投資等にかかった費用」に一定の助成率をかけた金額と「助成上限額」とを比較し、いずれか安い方の金額となります。このように生産性向上に資する設備等にかかった費用の全ての費用が助成されるわけではありませんので注意しましょう。

<例>

■ケース■

・事業場内最低賃金が980円で

・8人の労働者を1,070円まで引上げる

・設備投資に係る額は600万円

<助成率>

・事業場内最低賃金が980円なので、助成率は4/5

<助成上限>

・事業場内最低賃金を1,070円まで引き上げるので、90円コース

・8人の賃金引上げるため、助成上限額は450万円

≪「設備投資費用」と「助成上限額」の比較≫

【設備投資費用×助成率】480万円(600万円×4/5)

【助成上限額】450万円(90円コースの人数に応じた助成上限額)

⇒このケースの場合は、助成上限額の450万円が支給されることとなります。

業務改善助成金の申請から支給までの流れ

事業場所在地を管轄する都道府県労働局に交付申請を行います。事業所が複数ある場合、各事業所の属する労働局への申請がそれぞれ必要となります。

大まかな流れは、
労働局の申請内容の審査≫交付決定≫申請内容に沿って業務改善計画+賃上げを実施≫報告書を提出≫交付額決定≫助成金の受領
となります。事前に計画書や申請書を労働局へ提出した上で審査されるので、既に購入してしまったものや実施してしまった賃上げは対象にならない点に注意しましょう。

≪申請から支給までのフロー≫

STEP
交付申請(事業所)

都道府県の労働局へ「交付申請書」「事業実施計画書」を提出

STEP
交付決定(労働局)

審査の上、交付通知

STEP
事業の実施(事業所)

申請内容沿って設備導入・賃上げ(代金の支払い)を実施

STEP
実績報告(事業所)

労働局へ「事業実績報告書」と「助成金支給申請書」を提出

STEP
交付額決定(労働局)

交付額の決定と助成金の支払いを実施

STEP
助成金受領(事業所)

助成金の受け取り


このように申請手続きに結構な手間や労力がかかります。専門家に相談し、申請代行などを依頼してみるというのも良いでしょう。

業務改善助成金を活用した具体例を紹介

制度の概要は理解できても具体的にどのようなケースで業務改善助成金が活用されているのでしょうか?ここでは、中小企業が業務改善助成金を活用して生産性向上のための設備投資を行った事例を業種別に3つ紹介します。

■在庫管理システムの導入

<企業概要>

・従業員数:23人

・事業内容:卸売業

<実施概要>

・既存のシステムは、最新のOSに対応できない古いもので在庫管理を手作業で行っており棚卸作業に時間がかかっていた。卸売業の特性上、多種大量の商品の在庫管理が必要なので負担軽減のため新しいシステムに入れ替えた

・5人の従業員の事業場内最低賃金 を30円引き上げた(さらに、事業場内最低賃金を上回る従業員の賃金の引上げを実施)

<結果>

システムの入替により毎週の棚卸作業に費やす時間が無くなり、 迅速に在庫量や在庫金額を把握できるようになった

■自動餅つき機とベルトコンベアの導入

<企業概要>

・従業員数:19人

・事業内容:食品製造業

<実施概要>

・餅の製造や運搬を手作業で行っており時間がかかっていた。また、外国人従業員には写真を使い、身振り手振りで作業方法を教えていたため教育効果が低かった。 製造・運搬の作業の負担軽減と外国人従業員に分かりやすく作業方法を教えるため、餅つき機、ベルトコンベア、視聴覚機器、翻訳機を導入した

・19人の従業員の事業場内最低賃金を平均65円引き上げた

<結果>

・餅つき機やベルトコンベアの導入により、従来まで4人で行っていた作業を2人でできるようになった
・商品の製造時間が15%削減され、商品ロスもほぼ0%となった
・視聴覚機器・翻訳機の導入で外国人従業員への教育が従来の半分程度の時間でできるようになり、理解度も向上した

■業務管理システムの導入

<企業概要>

・従業員数:2人

・事業内容:理容業

<実施概要>

・従来は、会計作業をを手作業で行っており時間がかかり、ミスもあった。また、顧客管理や在庫管理も紙で行っていたので、探す手間がかかっていた。それらの課題を解決するために理容店専用の業務システムを導入した

・1人の従業員の事業場内最低賃金を61 円引き上げた

<結果>

・理容店専用の業務管理システムを導入することで、予約対応や顧客情報、在庫情報、売上情報も効率的に一元管理できるようになった

・精算処理や在庫管理に係る時間を半分に短縮、予約対応に係る時間が1日あたり10%程度短縮させることができ接客対応にかける時間を増やすことができるようになった

参考:厚生労働省「業務改善助成金の活用例(令和6年度)」

業務改善助成金の申請での注意点

申請にあたり注意点となるポイントとして以下をあげます。申請を検討するにあたり参考にされると良いでしょう。


<注意点>

  • 労働者(または従業員)がいない場合は、助成の対象になりませ
  • 「事業場内最低賃金の引き上げ」と「設備投資」は、【これから実施するものが助成の対象】となります(既に対応や購入をしてしまっているものなどは対象外)
  • 助成金には予算が設定されているので、予算が無くなってしまった場合は申請期間よりも早く終了してしまう場合もあります

まとめ

今回は、業務改善助成金の令和6年度(2024年度)と令和7年度(2025年度)の違いや支給要件、設備投資として対象になるものや申請の流れなどを紹介しました。助成金の内容をしっかり理解して助成金を給付する事で自社の業務効率化をしながら労働者の賃金条件も良くすることができ、労働者の離転職防止に役立てることができます。

助成額の計算や申請手続きなどは、少し手間や時間がかかることもあるので、申請のプロに相談すると事務負荷軽減につながります。電話相談などで簡単に相談することもできるので、まずは受給可能性があるのかなど相談してみるのも良いでしょう。

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この記事を書いた人

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