人材不足が続く中、採用や離職防止の施策に頭を悩ませている企業様も多いのではないでしょうか?
社員研修を取り入れる事で、社員のエンゲージメント向上や早期離職の対策に効果が発揮できることがあります。また、求人の際にも社内の研修制度が有る企業の方が応募者にとって魅力となり、入社の動機の1つにもなりえます。
しかし、社員研修を取り入れるには追加予算や費用がかかるので、金銭面で躊躇してしまう企業様も多いでしょう。
そこで費用負担軽減に役立つのが国や自治体が提供している助成金の活用です。
今回は、人材育成のために役立つ社員研修を導入する際に申請できる助成金の申請手続きから活用方法までご紹介します。参考にして是非、貴社でも社員研修の導入をご検討ください。
助成金を最大限に活用し人材育成に利用しましょう。

ベテランの社員が退職を申し出てきたんだよ。やる気もあって期待していた社員だし、若手だけどそろそろ役職も与えようかなって考えていたところだったのに…



それは悲しいことだナ。退職理由はなんだったんダ?



「新しい仕事にチャレンジしてスキルアップを目指したいから」という前向きな理由だったよ。せっかく育ったと思った社員が退職してしまうと会社にとって痛手だよ。



なるほど、最近そういう話はよく聞ク。新しいスキルや環境を目的に転職する若者は多いらしいゾ。社内でスキルアップのための研修を実施してみるのはどうダ?



研修!そういえば、あまり研修のようなものはうちではやっていなかったな。でも、自前で研修をやる余裕は無いし、外部に依頼すると高額な費用がかかるんじゃないかな?



それがそうでもないんダ。中小企業向けの助成金を活用すると費用負担を抑えながら、社員向け研修を実施することができる可能性があル。今回は、研修で申請できる助成金を紹介していくゾ。
【法人向け】企業が研修や人材育成の取組みを行うと助成金が申請できる可能性が!
企業の成長と競争力の向上には、社員の教育と育成が重要な要素となっています。これをサポートするために、国や地方自治体は多様な補助金や助成金を提供しています。研修や人材育成に関する助成金は、企業が社員に対して行う研修やセミナーの費用を一部補助し、企業の負担を軽減しつつ、効果的な人材育成を促進するものです。具体的な例として、新入社員向けのIT研修、ベテラン社員対象のリスキリング研修、非正規社員を正社員化するための教育研修など、職種や内容に応じて様々な助成金があります。
これにより、企業は最新の技術や知識を社員に提供し、業務効率の向上や新たなビジネスチャンスの開拓が可能となります。また、助成金の活用は、研修プログラムの充実や多様化を実現し、社員のモチベーション向上や離職率の低下にも貢献します。助成金の対象者や条件は様々であるため、会社に最適な助成金を選択するための情報収集や、専門家への相談が重要となります。
研修や人材育成で申請できる助成金とは?
研修(訓練)や人材教育で申請できる助成金として「人材開発助成金」「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」が挙げられます。全て、研修(訓練)を受ける対象者は雇用保険の被保険者であることが条件となります。ここでは、具体的にそれぞれの助成金がどのような内容なのか確認していきましょう。


人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、企業が従業員に対して職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる目的で職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。予め計画を作成し、作成した計画に沿って職業訓練を行っていく必要があります。人材育成に使える助成金の中でも特に幅広い企業を対象としているので、幅広い企業で活用できる可能性があるというのもポイントの1つです。
人材開発支援助成金は、以下の6つのコースで構成されているので、 それぞれのコースの内容を踏まえ、自社に適したコースを選択する必要があります。それぞれのコースについて概要を確認していきましょう。
①人材育成支援コース:
以下のような内容を満たす訓練の実施に対して訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるもの
・労働者の職務に関連した専門的知識や技能を習得させる目的で訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度
・職務に関連した知識・技能を習得させるのを目的にOJT(実習)とOFF-JT(座学)を効果的に組合せた内容の訓練が対象
・1人あたり最低でも10時間以上のOFF-JT(座学)が必要で実施時間に応じて段階的に助成額も変動(最低10万円~)
②教育訓練休暇等付与コース:
・有給教育訓練等制度(3年間で5日以上)を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合に支給されるもの
・助成額は1企業あたり30万円(賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合は加算額6万円)
③人への投資促進コース:
・労働者を対象にDX推進やIT分野に関連する職業訓練を実施した場合に支給されるもの
・訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される。
・経費助成率は訓練内容によってことなるが、中小企業60%(大企業では45%)
※1事業所1年あたり2,500万円が限度。助成率などは訓練区分によって詳細が異なります
④事業展開等リスキリング支援コース
・企業において新たな事業展開を行うにあたり、必要となる専門的な知識および技能の習得を目的とした訓練に助成されるもの
・事業展開やDX・GXに伴い新たな分野で必要となる知識と技能を習得させるための訓練を実施した場合に支給されるもの
・助成率は75%(大企業60%)+賃金助成額:1人1時間当たり1,000円(大企業は500円)


⑤建設労働者認定訓練コース
・認定訓練を行い、通常の賃金の額以上の賃金を支払う中小建設事業主に対して支給されるもの
⑥建設労働者技能実習コース
・雇用する建設労働者に有給で技能の向上のための実習を受講させた建設事業主または建設事業主団体に助成するもの
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
「研修」でイメージするものからは少し外れるかもしれませんが、スキルアップを目的に従業員を他社へ出向されることで申請できる助成金もあります。それが「スキルアップ助成金」です。スキルアップ助成金は、「在籍出向」を通しては自社では経験できない実践により新たなスキルの習得を目的とした出向を支援する助成金です。労働者のスキルアップを在籍型出向で行い、復帰した際の賃金を(出向前と比較して)5%以上上昇させる条件があります。条件を満たした事業主(出向元)に対して当該事業主が負担した出向中の賃金の一部が助成されます。
在籍型出向とは?
「在籍型出向」とは、出向元企業と出向先企業の出向契約によって、 労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結び、出向 先企業に一定期間継続して勤務することをいいます。


「在籍型出向」の活用事例
■製造業の例
【出向元】事業体制見直しの中で新製品の事業開拓を進めるため、従業員のスキルアップやキャリア形成がしたい。ロボット組立の最先端工場で経験を積ませ、組立技術やライン管理、安全管理技能等の習得を目指すことにした。
↓
【出向先】海外でのロボット需要拡大で製造現場の人員が不足しており、質の高い人材を探していた。違う環境・職種へチャレンジしたい意欲のある人材を受入れることとした。
■サービス業の例
【出向元】老舗旅館を経営しているが、最新型ホテルの優れたサービスを学ぶため、出向させたい。
↓
【出向先】老舗旅館からの出向であることから、スタッフのスキルアップにもつながると考え、初めて出向を受け入れた。
参考:厚生労働省HP(産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース))
研修のための助成金の申請手続きや流れ
ここまで、研修を導入する際にどのような助成金が活用できるかをご紹介してきました。ここでは、実際に研修で申請できる助成金手続きには、どのような順序でどのような手続きが必要かということをご紹介していきます。助成金の情報は厚生労働省のHPで情報収集を行い、実際の書類の提出や疑問点の相談等は都道府県の労働局の窓口に提出をします。
ご紹介した2つの助成金の申請の流れは、大まかに以下の通りになります。
①助成金概要や条件等の確認⇒②計画立案(書類作成)⇒③計画申請⇒④計画認定⇒⑤研修の実施⇒⑥支給申請⇒⑦支給決定⇒⑧支給額の受給
手続きに必要な書類や手続きの詳細は、申請する助成金の種類や企業の状況によって異なるため、事前に確認が必須です。また、研修の計画書や実施報告書、訓練のカリキュラム、参加者の出欠記録などの資料や、就業規則や雇用契約書などの資料まで提出する必要が出てくるケースもあります。助成金申請の手続きをスムーズに進め、本業業務の負荷を減らすためにも専門士業のコンサルタントに相談することも一つの方法です。
研修の助成金を利用する際の注意点
実施したい内容の研修が助成金の対象になるのかの確認
企業が人材育成のために研修助成金を活用する際には、対象者の確認が欠かせません。これらの助成金は特定の条件を満たす教育・育成を目的とした個人や会社に提供されるため、まずは自社の従業員や組織がどの助成金の対象となっているかを確認することが重要です。厚生労働省が管轄する助成金の多くでは、正社員や契約社員、パートタイムで働く従業員が対象となることがありますが、助成金の種類によって適用条件は異なります。そのため、詳細な要件を正確に把握することが不可欠です。また、研修内容やスケジュール、従業員の雇用形態が助成金の対象かどうかも確認する必要があります。申請を行う前に、該当する助成金のガイドラインを熟読して申請に必要な条件を満たしているかどうかを確認することが重要です。
また、助成金申請は書類を揃えたり専門的な知識が必要だったりと煩雑になるケースも多いので、本業に集中するために専門家に相談することもオススメです。専門家に相談することで、申請に係る労力を軽減することは勿論、研修だけでなく他に申請できる助成金が無いかなどコンサルティングを受けられる点でメリットが高いでしょう。
助成金の申請期間はいつなのか?
助成金の申請期間は助成金の種類によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。多くの助成金は年度ごとに予算が設定されており、申請期間が限られていることが一般的です。申請のタイミングを逃すと、次の年度まで待たなければならない場合や研修のスケジュールをずらさなければならない場合もあります。したがって、助成金の申請スケジュールをしっかりと把握し、必要な書類の準備を事前に進めることが求められます。
また、助成金の申請にはさまざまな書類が必要となることが多いため、必要書類リストを確認し、漏れのないように準備することが不可欠です。書類の不備や遅延は申請が受理されない原因となるため、注意深く準備を進めましょう。さらに、研修の実施結果を正確に報告するために、参加者の出席状況や研修の内容を詳細に記録しておくことも重要です。
最後に、助成金を受け取った後も、適切な報告と管理が必要です。助成金の使途が適正であることを証明するために必要な報告書や実績報告を期限内に提出しなければならない場合があります。これらの手続きを怠ると、助成金の返還を求められることもあるため、注意が必要です。適切な手続きを行うことで、研修助成金を有効に活用し、企業の人材育成を促進することが可能になります。
助成金の手続きやサービス購入の順番をよく確認する
助成金の申請では、サービス購入の前に都道府県の労働局へ計画書の提出が必要になります。計画書を提出する前に研修を実施してしまうなど順番を間違えると助成金の申請が出来なくなってしまうので、手続きやサービ購入(発注)の順番などをよく確認しておきましょう。
また、助成金が受給できるのは、研修を実施した後になるのもポイントの1つです。支給決定(または不支給決定)は、研修を実施した後になり、支給申請までに研修に係る費用を払い込むことになるので、支給を受ける前に研修費用を準備しておく必要があります。
よくある質問
助成金が受給できないケースまたは、一度受け取った助成金を返還しなければならないケースはありますか?
過去に労働保険料を納入していない場合や労働関係法令の違反があった場合、または、不正受給の処分を受けた事がある場合などは助成金が支給されないケースがあります。
また、助成金は通常であれば返還は不要ですが、万が一、支給後に不正受給が発覚した場合は、支給された助成金を返還しなければなりません。
受給できない事や返還が必要にならないよう助成金申請の条件や対象となる費用の使い方をするなど注意しましょう。
サブスクリプション形式のオンライン研修なども助成金の対象になるでしょうか?
サブスクリプション形式のオンライン研修でも申請できる助成金はあります。
サブスクリプション形式のオンライン研修とは、1研修当たりの対象経費が明確でなく、同額で複数の研修を受けることができるeラーニングで実施されるサービスのことをいいます。支給要件には、事業主の要件、労働者の要件、訓練の要件が定められているので、各要件を充たしているかきっちりと確認をしていくことが必要となります。
従業員のリスキリングを促進するために活用できる助成金はありますか?
従業員のリスキリングを目的とした助成金もあります。
代表的なものが人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)です。事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、従業員が業務を行うにあたり新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための研修に対して助成される制度です。
申請にはどのような書類の提出が必要ですか?また、申請書類の提出期限はいつですか?
どの助成金を申請したいかによって提出書類は異なりますが、研修の実施計画書や助成を受けるための申請書等を用意しておく必要があります。
厚生労働省のHPで申請書類のダウンロードや電子申請を受け付けているものもあるので、申請し易い提出方法を調べておくのもよいでしょう。
また、書類毎に提出期限が定められているので、受付機関が定めている申請要綱を詳細までよく確認し、期限を確認しておく必要があります。
書類を集めたり、要件に満たすため提出書類を準備したり書類の提出期限を管理するのにはそれなりの手間がかかるので、サポートしてくれるサービスを受けることも選択肢の1つとして考えてみるのもオススメです。
まとめ


いかがでしたでしょうか?
助成金の活用で、企業は費用負担を軽減しながら、従業員のスキルアップに役立つ研修を実施することができます。各従業員のスキルアップは製品やサービスの向上等に繋がり、収益拡大にも繋げることができると言えます。
また、企業が従業員のスキルアップやキャリア開発を促進するために研修を実施することは、離職防止や採用の点でもメリットが高いと言えます。
助成金を受けるためには、制度の詳細をしっかりと理解し、申請条件を満たすことが必要なので、自社で申請できる内容の研修なのかをよく検討した上で、申請の準備や書類を作成することが重要となります。申請や研修内容をプロに相談してサポートしてもらう事を検討してもよいでしょう。
従業員のスキルアップを効果的に推進し、企業の成長を促進させましょう!