みなさんは、「ものづくり補助金」について聞いたことがあるのではないでしょうか?
ものづくり補助金は、中小企業や小規模企業向けの補助金で、一定の要件を満たすことで補助を受けられるものです。企業の規模や対象の経費など要件や条件が細かく決まっているので、1つ1つ確認していきましょう。

今度、うちの会社で新商品を開発しようと思っているんだけど、研究開発費とか新しい材料を仕入れたりで当初の想定よりも経費が膨らんできて困っているのだよ。



ほう、新商品の開発で経費がかかっているのか、新しい取組には経費の増加がつきものだナ。でも、その場合、条件を満たせば補助金が活用できる可能性があるナ。



えっ、そうなの!?
詳しく教えて!



そうか、それなら今回は「ものづくり補助金」の申請できる要件について解説していク。条件をクリアしていそうかザックり読んで見ていってくレ。
ものづくり補助金とは?概要を解説
「ものづくり補助金」は、正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称です。大企業以外の中小企業や小規模企業で条件を達成した革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓での生産性向上に資する設備投資などの経費の一部を補助する補助金です。単に機械装置等を導入する場合や既存工程の効率化(プロセス改善)では、認められないので、ものづくり補助金のコンセプトに合った設備導入になっているかが審査されます。
また、補助金の名称の中に「ものづくり」とつくのでしばしば製造業が対象と思われがちですが、製造業のみならず、商業・サービス業など幅広い業種が対象となります。
補助率・補助上限額は、申請する枠や業種と企業規模によって変わるので、自社ではどの程度の補助が受けられるのか確認しましょう。


ものづくり補助金 対象となる事業者は?
それでは、ものづくり補助金の対象となる事業者はどのような事業者なのでしょうか?ここでは、対象事業者について確認していきます。
まず、①日本国内に本社があること②補助対象経費となる機械装置などを設置する工場や店舗などが日本国内にあることが前提条件となります(※ただし、グローバル枠の海外への直接投資に関する事業を行う場合においては海外拠点が必要となる場合があります)。
また、中小企業者や小規模企業者・小規模事業者、企業組合、社会福祉法人なども対象となる場合があります。規模の大きさによって、補助率が変わってくるので、自社がどこに区分されるのか知っておくことが必要です。
中小企業者の場合、区分する際に業種によって「①資本金」の金額と「②常時使用する従業員」の人数による上限が設けられています。小規模企業者・小規模事業者では、「常時使用する従業員」の人数を見て判断します。
下記のようにまとめてみたので、自社が対象となるかチェックしてみましょう。
■中小企業者
※①と②両方満たす必要あり
業種 | ① (●円以下) | 資本金 (●人以下) | ②常時使用する従業員
製造業、建設業、運輸業、旅行業、その他 | 3億円 | 300人 (※1) |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(※2) | 5,000万円 | 100人 (※3) |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
(※1)製造業≫一部を除くゴム製品製造業は、900人以下
(※2)サービス業≫ソフトウェア業又は情報処理サービス業は、3億円以下および300人以下の条件
(※3)サービス業≫旅館業は、200人以下
■小規模企業者・小規模事業者
業種 | (●人以下) | 常時使用する従業員
製造業、その他 | 20人 |
商業・サービス業(※4) | 5人 |
(※4)商業・サービス業≫宿泊業・娯楽業は、常時使用する従業員の数が 20 人以下
■企業組合や社会福祉法人など
企業の組合や連合会、その他、要件を満たす特定非営利活動法人や社会福祉法人も対象になる場合があります。
該当しない組合等や(公益・一般)財団法人、(公益・一般)社団法人、医療法人、法人格のない任意団体などは補助対象外となるので注意が必要です。詳細は、公募要領の「補助対象事業」、「補助対象外となる事業」をご確認ください。
■「ものづくり補助金」は、個人事業主も対象となる!
中小企業・小規模事業者などを対象にした「ものづくり補助金」ですが、従業員数の条件を満たせば業種を問わず個人事業主も該当となります。
従業員数が小規模事業者の「常時使用する従業員数」の範囲内に収まっていれば申請できるので、まずは従業員数を確認して判断しましょう。
ものづくり補助金の申請には「①基本要件」と「②申請枠の要件」の条件を満たす必要あり!
ものづくり補助金は、中小企業庁と中小企業基盤整備機構が制度化した補助金で、生産性向上を目的とした設備投資やサービス・試作品開発を支援します。業種を問わず、生産性向上につながる設備導入が対象となり、サービス業や農業など幅広い業種が採択されています。個人事業主も条件を満たせば申請可能です。
申請にはすべての申請者が必ず満たすべき「①基本要件」と申請する内容によって異なる「②グローバル枠固有の追加要件」の2つがあり、申請する枠によっては両方を満たす必要があります。
①「基本要件」とは?
ここでは基本要件の内容について詳しく見ていきます。基本要件は以下の4つから構成されます。
2、3については、未達成の場合は補助金の返済義務が生じるので注意が必要です。
1.付加価値額の増加:
付加価値額(※)の年平均成長率を3%以上増加
※ものづくり補助金における付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」を指します。
2.賃金の増加(未達の場合返済義務発生):
「給与支給総額の年平均成長率を2%以上増加」または「1人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加」
3.事業所内最低賃金水準(未達の場合返済義務発生):
事業所の最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金より30円以上アップさせること
4.(従業員が21名以上の場合)従業員の仕事・子育て両立支援(応募時点で達成が必要):
次世代育成支援対策推進法に規定する「一般事業主行動計画」の策定・公表を行うこと
②グローバル枠固有の「追加要件」とは?
グローバル枠で申請を行いたい場合は、①基本要件に加えて次の1~3の要件も満たす必要があります。
1.以下の(イ)~(ロ)のいずれかの事業に該当し、国内の生産性を高めること
(イ)海外への直接投資に関する事業:
- 補助対象経費の1/2以上が海外支店の補助対象経費、又は、海外子会社の事業活動に対する外注費もしくは貸与する機械装置・システム構築費に充てられること(海外子会社についての提出資料あり)。
- 本社は国内に所在するとともに、国内の事業所にも投資(海外事業と一体的な機械装置等を取得)すること。
例)国内事業と海外事業の双方を一体的に強化し、グローバルな製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、国内拠点の生産性を高める事業
(ロ)海外市場開拓(輸出)に関する事業:
- 製品等の最終販売先の1/2以上が海外顧客となること(マーケティング調査に基づく海外市場調査報告書や想定顧客による性能評価報告書等の提出書類あり)。
- 補助事業の売上累計が補助額を上回る事業計画であること。
例)海外展開を目的とし、製品・サービスの開発や改良、ブランディングや新規販路開拓に取組む事業
(ハ)インバウンド対応に関する事業:
- 製品・サービスの販売先の1/2以上が訪日外国人になること(インバウンド市場調査報告書、プロトタイプの仮説検証の報告書等の提出書類あり)。
- 補助事業の売上累計が補助額を上回る事業計画であること。
例)製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、インバウンド需要を獲得する事業
(二)海外企業と共同で行う事業:
- 共同事業開発に伴う設備投資は国内であり、成果物の権利の全部又は一部が補助事業者に帰属すること(共同研究契約書又は業務提携契約書等の提出書類あり)。
- 共同する外国法人の経費は補助対象外。
例)外国法人との共同研究・共同事業開発により、新たに成果物を生み出す事業
2.海外事業に関する実現可能性調査(※)を実施すること
(※)実現可能性調査とは、市場調査や現地の規制調査・法令調査、取引先の信用調査等の海外事業の実現可能性を判断するための調査をいいます。
3.社内に海外事業の専門人材を有すること又は海外事業に関する外部専門家と連携すること
ものづくり補助金 対象となる経費の種類とその上限は?


申請する枠が一般枠かグローバル枠かによっても変わりますが、ものづくり補助金の対象となる主要な経費の種類は、①機械装置・システム構築費、②運搬費、③技術導入費、④知的財産権等関連経費、⑤外注費、⑥専門家経費、⑦クラウドサービス利用費、⑧原材料費、の8種類です。
ここでは、8つの経費の種類と概要、補助上限があるものについては上限をまとめますが、詳細条件が細かく記載されているので、募集要項をご確認ください。
<「ものづくり補助金」対象経費>
費用の種類 | 概要 | 補助上限 |
機械装置・システム構築費 | 本業のために使用する ●機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 ●専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 ●上記どちらかと一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費 | 機械装置・システム構築費以外の経費は、総額で500万円までが補助上限 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 | - |
技術導入費 | 本業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費 | 補助対象経費総額(税抜)の1/3 |
知的財産権等関連経費 | ●新製品・新サービスの事業化にあたって必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用 ●外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費。 | 補助対象経費総額(税抜)の1/3 |
外注費 | 新製品・新サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一 部を外注(請負、委託等)する場合の経費 | 補助対象経費総額(税抜)の1/2 |
専門家経費 | 本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費 | 上限額は補助対象経費総額(税抜)の1/2 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 | - |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費 | - |
※一部のグローバル枠では、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も含まれる場合あり
ものづくり補助金の中小企業の活用事例
対象となる経費は何となく分かったものの、具体的なイメージがわきづらいかもしれません。ここでは、実際に補助金を活用した事例を紹介するので自社でも補助金が活用できないか見ていただければと思います。
対象経費 | 事例 |
機械装置・システム構築費 | 【飲食業】顧客管理システム導入費用 ⇒コロナ禍のデリバリーサービス開始にあたり、予約やその通知、顧客管理システムが一体化した独自のデリバリーサービスを構築。 |
運搬費 | 【製造業】荷物の移動にかかる費用 ⇒機械装置を設置するために、既存の荷物を移動させるのにかかった費用 |
技術導入費 | 【サービス業(美容院)】商標権ライセンスの取得費用 ⇒新規で他メーカーの物販事業を開始する際にかかる費用 |
知的財産権等関連経費 | 【食品メーカー】ISO認証を申請する際の審査出願にかかる費用 |
外注費 | 【サービス業(イベント運営会社)】バーチャルイベント開催時のUI設計外注にかかる費用 ⇒バーチャル上でライブを視聴できる新サービス開始時のサービスのUI設計外注にかかる費用 |
専門家経費 | 【製造業】大学教授によるコンサルティング費用 ⇒新商品開発にあたりその分野の専門的知見のある大学教授にコンサルティングを依頼 |
クラウドサービス利用費 | 【小売業(アパレル)】AWS費用用 ⇒新規でネット販売を開始するためのECサイト・注文管理システム維持にかかるAWS費用 |
原材料費 | 【製造業(化粧品製造)】試作開発のために調達した地元特産品の調達費用 ⇒地元の特産品を使用したスキンケア化粧品の試作開発で特産品を調達した場合にかかった費用 |
ものづくり補助金 採択率は半数以下!
ものづくり補助金の対象経費や事例を見ていくと気になるのはどれくらいの採択率があるのかという点だと思います。ものづくり補助金の総合サイトで公表されている「19次締切における申請者数、採択者数」を基に採択率を確認しましょう。
申請者数と採択者数
高付加価値化枠 | 製品・サービス グローバル枠 | 総計 | |
申請者数 | 5,025 | 311 | 5,336 |
採択者数 | 1,623 | 75 | 1,698 |
採択率 | 32.2% | 24.1% | 31.8% |
出典:ものづくり補助金総合サイトのデータを基に一部加工
枠ごとに採択率を見てみると「製品・サービス高付加価値化枠」で32.2%、「グローバル枠」24.1%となっており、総計でみると31.8%となります。こう見ると、どれも半数以下の採択率となっており、決して高くない数字であることが分かります。
補助金の申請が通過できるように専門家に申請を委託するのも良い方法と言えます。
ものづくり補助金 申請の注意点
■大企業やみなし大企業は補助金の対象ではないので注意
冒頭から解説していますが、ものづくり補助金は、中小企業や小規模企業などを対象としたものなので、大企業は対象にならないと言うポイントがあります。それに伴い、みなし大企業も対象外となるので注意しましょう。
大企業は、前述した中小企業の定義(資本金と常時使用する従業員数)より大規模な企業と位置付けられます。また、中小企業でも以下の(1)~(5)のどれかに当てはまると「みなし大企業」とみなされ、これもまた補助対象からは外れるので注意が必要です。
<みなし大企業の条件(以下いずれかに該当する場合)>
(1) 発行済株式の総数又は出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している
(2) 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2/3以上を大企業が所有している
(3) 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の1/2以上を占めている
(4) 発行済株式の総数又は出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業者等が所有している
(5) (1)~(3)に該当する中小企業者等の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている
■小規模企業者・小規模事業者として申請したが途中で定義から外れた場合には補助率がダウンするので注意
小規模企業者・小規模事業者の補助率は、 2/3 です。しかし、以下の期間に小規模企業者・小規模事業者の定義から外れた場合は、補助率が下がり 1/2 となります。
・補助金交付候補者としての採択後、交付決定までの間に定義から外れた場合
・交付決定後、補助事業実施期間終了日(補助事業完了日)までの間に定義から外れた場合


■対象になりそうでならない対象外経費に注意
対象経費に紐づいた経費でも補助金の対象とならないケースもあるので注意しましょう。
例えば、以下のようなケースの場合は、対象外となる費用もあるので補助がでることを見越して予算を組んでしまうと実際は補助が得られなかったというようなことになってしまいます。
●対象の機械を設置するために工場建屋や簡易的な建物を建設した場合
⇒〇対象:機械購入費/×対象外:工場建屋や簡易的な建物の建設にかかった費用
●省力化に繋がる自動車やパソコンなど
⇒×本来の目的外でも幅広く活用できるため対象外
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領
まとめ ~ものづくり補助金を活用して新分野を開拓しよう!~


ここまでものづくり補助金の要件や対象事業者、対象経費やその補助上限などをまとめてきました。
一言に補助金と言っても条件などが詳細に決められており、募集要項を読み解くのもなかなか時間が掛かると思います。
本業に集中しながら補助金を申請するのは非常に骨が折れるので、補助金申請の専門家へ自社が対象となるのか、補助金額はいくらくらいになりそうかなどを相談すると良いでしょう。SBIバリュープレイスでも申請に関する相談も受け付けているので、まずは、こんな内容で申請できないか?と相談してみることをおすすめします。
中小企業、小規模企業は、補助金も活用し事業を発展させていきましょう!
※申請に関する詳細は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領」をご確認ください。