
経営者さん最近、従業員が立て続けに辞めてしまったんだよ。
現場は、人手不足になって、困っているんだよね。



それは、非常に困ったことだナ。
辞めてしまう原因はなんなんダ?



辞めてしまうのは、非正規社員の人が多かったんだけど、お給料など待遇面でもっと良い会社が見つかったんだって。
本当は、うちもお給料を上げてあげたいけど経営的にも厳しくて賃上げに踏み切れなかったところなんだよ。



それは、深刻な話だナ。そんな企業のために「キャリアアップ助成金」という助成金があるのは知っているカ?



そんな助成金があるの?



そうなんだ。非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行うことによって助成金が得られる制度で、7つのコースから必要なものを選ぶことができるんダ。



え!とても興味があるよ。



では、今回は「キャリアアップ助成金」について、コースや助成額、申請の流れに至るまで解説していくゾ。
「キャリアアップ助成金」とは?
国内の非正規雇用労働者は2010年より増加しており、近年では約40%の労働者が非正規雇用労働者と言われています。「キャリアアップ助成金」は、雇用保険に加入している非正規雇用労働者の減少を目的として厚生労働省が設立しました。「キャリアアップ助成金」を受給するには、大きく分けて2つのステップがあります。1つ目は、会社が契約社員・派遣社員・アルバイト・パートといった非正規雇用労働者を正社員にする制度や処遇改善する制度を整備すること。2つ目は、会社が整備した制度に従って実際に非正規雇用労働者を正社員化、処遇改善を実行することです。
労働者の意欲向上に繋がり、結果的に会社全体の生産性向上も期待できる点で事業主にとっては優秀な人材の確保、労働者にとっては雇用の安定や処遇の改善といったメリットを享受できます。今回は「キャリアアップ助成金」のコース概要や支給対象、申請のポイントなどを解説していきます。
「キャリアアップ助成金」コースの種類や概要を解説


2025年11月時点で「キャリアアップ助成金」には、正社員化支援と処遇改善支援の目的に分けて、1.正社員化コース、2.障害者正社員化コース、3.賃金規定等改定コース、4.賃金規定等共通化コース、5.賞与・退職金制度導入コース、6.社会保険適用時処遇改善コース、7.短時間労働者労働時間延長支援コース、の7つのコースがあります。ここでは、簡単に各コースの概要について解説していきます。
多くのコースがあり、自社で申請するのであればどのコースがよいのか迷うケースも多いと思うので、一度専門家に相談してみると良いアドバイスを得られるかもしれません。


多くのコースがあり、自社で申請するのであればどのコースがよいのか迷うケースも多いと思うので、一度専門家に相談してみると良いアドバイスを得られるかもしれません。
≪「キャリアアップ助成金」コース一覧≫
1.正社員化コース
2.障害者正社員化コース
3.賃金規定等改定コース
4.賃金規定等共通化コース
5.賞与・退職金制度導入コース
6.社会保険適用時処遇改善コース
7.短時間労働者労働時間延長支援コース
1.キャリアアップ助成金の「正社員化コース」とは?
「正社員化コース」は、就業規則または労働協約等に規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されるコースです。年度1事業所当たりの支給申請は20名の上限人数が設けられています。また、助成額は、中小企業と大企業どちらに該当するか、労働者が「重点支援対象者」に該当するか、正社員化するのは有期雇用労働者か無期雇用労働者か、など様々な要素によって決定します。
正社員化コースの助成額
「正社員化コース」の重点支援対象者(※)
重点支援対象者の1人当たりの助成額は以下の通りです。重点支援対象者については、正社員化後6カ月間雇用後(1期)、条件を達成した上でさらに6カ月間雇用すると2期目の申請が可能となります。
| 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 | |
| 中小企業 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| 大企業 | 60万円(30万円×2期) | 30万円(15万円×2期) |
(※)重点支援対象者とは?:
重点支援対象者とは、以下のa~cのいずれかに該当する者を指します。
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次の1、2いずれにも該当する有期雇用労働者
1.過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
2.過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者(注1)、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者(注2)
(注1)派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合
(注2)人材開発支援助成金の特定の訓練修了者:詳細はキャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(パンフレット)参照
「正社員化コース」の重点支援対象者以外
重点支援対象者以外を対象とする場合、1人当たりの助成額は以下のとおりです。
| 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 | |
| 中小企業 | 40万円(40万円×1期) | 20万円(20万円×1期) |
| 大企業 | 30万円(30万円×1期) | 15万円(15万円×1期) |
「正社員化コース」の加算額
加算額は、1事業所当たり1回のみで以下の通りです。
| 措置内容 | 加算額 |
| 正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合 | 20万円(大企業15万円) |
| 多様な正社員制度(※)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合 (※)勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上の制度 | 40万円(大企業30万円) |


2.キャリアアップ助成金の「障害者正社員化コース」とは?
「障害者正社員化コース」は、障害者の雇用を促進するとともに職場定着を図る目的で設けられたコースです。以下いずれかを継続的に講じた場合に助成を受けることができます。キャリアアップ助成金における正社員化コースの支給申請上限人数には該当しません。
支給対象者や措置内容によって助成額が異なります。
<達成条件(以下いずれかを継続的に講じること)>
-有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する措置
-無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置
「障害者正社員化コース」の助成額
※( )内は中小企業以外の額。支給対象者1人あたり、以下の額を支給
≪重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者≫ 支給対象期間:1年
| 措置内容 | 支給総額 | 各支給対象期における支給額 |
| 有期雇用から正規雇用への転換 | 120万円(90万円) | 60万円×2期(45万円×2期) |
| 有期雇用から無期雇用への転換 | 60万円(45万円) | 30万円×2期(22.5万円×2期) |
| 無期雇用から正規雇用への転換 | 60万円(45万円) | 30万円×2期(22.5万円×2期) |
≪重度以外の身体障害者、重度以外の知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害と診断された者≫ 支給対象期間:1年
| 措置内容 | 支給総額 | 各支給対象期における支給額 |
| 有期雇用から正規雇用への転換 | 90万円(67.5万円) | 45万円×2期(33.5万円※×2期)※第2期の支給額は34万円 |
| 有期雇用から無期雇用への転換 | 45万円(33万円) | 22.5万円×2期(16.5万円×2期) |
| 無期雇用から正規雇用への転換 | 45万円(33万円) | 22.5万円×2期(16.5万円×2期) |
3.キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」とは?
有期雇用労働者等(※)の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成します。助成額は、中小企業と大企業のどちらに該当するか、賃金を何パーセント増額改定したかなどの要素で決められます。
(※)一部の有期雇用労働者等の賃金を増額する場合には、その区分が雇用形態別または職種別、その他合理的な理由(部門別等)に基づき区分されている場合に限り、本助成コースの対象労働者と認められます。
「賃金規定等改定コース」の支給額
1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は100人までとなり、1人当たりの助成額は以下のとおりです。
| 3%以上4%未満 | 4%以上5%未満 | 5%以上6%未満 | 6%以上 | |
| 中小企業 | 4万円 | 5万円 | 6.5万円 | 7万円 |
| 大企業 | 2.6万円 | 3.3万円 | 4.3万円 | 4.6万円 |
「賃金規定等改定コース」の加算額
「賃金改定コース」の加算額は1事業所当たり1回のみで、 1事業所当たりの加算額は以下の通りです。
| 措置内容 | 加算額 |
| 職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合 | 20万円(大企業15万円) |
| 有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合 | 20万円(大企業15万円) |
4.キャリアアップ助成金の「賃金規定等共通化コース」とは?
「賃金規定等共通化コース」は、就業規則または労働協約の定めるところにより、雇用する全ての有期雇用労働者等に、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成されるものです。
助成は1事業所当たり1回のみで、企業規模(中小企業であるか大企業であるか)によって助成額が変わります。
「賃金規定等共通化コース」の助成額
1 事業所当たり1回のみ
| 企業規模 | 支給額 |
| 中小企業 | 60万円 |
| 大企業 | 45万円 |
5.キャリアアップ助成金の「賞与・退職金制度導入コース」とは?
「賞与・退職金制度導入コース」は、就業規則または労働協約の定めるところにより、全ての有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新設、支給(または積立て)を実施した場合に助成されるものです。同コースの対象となる退職金制度は、積立や拠出費用を事業主が負担する必要があり、1事業所あたり1回のみ助成が受けられます。
賞与・退職金制度導入コースの助成額は、企業規模(中小企業か大企業か)や賞与制度と退職金制度を同時に導入するかどちらか一方のみの導入にするのかで変わります。
「賞与・退職金制度導入コースの支給額
1事業所当たり1回のみ
| 賞 与 又 は 退 職 金 制 度 いずれかを導入 | 賞 与 及 び 退 職 金 制 度 を同時に導入 | |
| 中小企業 | 40万円 | 56万8,000円 |
| 大企業 | 30万円 | 42万6,000円 |
6.キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」とは?
「社会保険適用時処遇改善コース」は、有期雇用労働者等を新たに社会保険に適用させるとともに、収入を増加させる(手当支給・賃上げ・労働時間延長)または、週所定労働時間を延長し、社会保険に適用させる雇用する短時間労働者に、取り組みを講じた場合に助成されるものです。助成額は、企業規模(中小企業か大企業か)やメニューによって異なります。
また、「社会保険適用時処遇改善コース」は令和8年3月31日までの暫定措置になっています。
<達成条件(以下いずれかの取組みを講じること)>
-新たに社会保険の被保険者要件を満たし、その被保険者となった際に、賃金総額を増加させる取り組み(手当支給・賃上げ・労働時間延長)を行った場合
-週の所定労働時間を4時間以上延長する等を実施し、これにより当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たし、その被保険者となった場合
「社会保険適用時処遇改善コース」の助成額
手当等支給メニュー
1人当たりの助成額は以下の通り。
| 企業規模 | 1年目の取組、2年目の取組 | 3年目の取組 |
| 中小企業 | 40万円(10万円×4期) | 10万円 |
| 大企業 | 30万円(7.5万円×4期) | 7.5万円 |
1年目の取組、2年目の取組:労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額等の15%以上)の手当支給または賃上げ
3年目の取組:基本給の総支給額の18%以上増額(賃上げ等、労働時間延長あるいはその両方による増額)
労働時間延長メニュー
以下の延長時間と賃金引き上げ率を達成することで、中小企業は30万円、大企業は22.5万円の助成額となります。
| 延長時間 | 4時間以上 | 3時間以上4時間未満 | 2時間以上3時間未満 | 1時間以上2時間未満 |
| 賃金引き上げ率 | – | 5%以上 | 10%以上 | 15%以上 |
7.キャリアアップ助成金の「短時間労働者労働時間延長支援コース」とは?
「短時間労働者労働時間延長支援コース」は、令和7年7月1日から新設されたコースで、最近話題にもなった年収の壁対策の取組を行うことを目的としたものです。労働者を新たに社会保険に加入させ収入増加の取り組みを行った事業主に対して労働者1人につき最大75万円の助成が受けられる制度です。
「キャリアアップ助成金」における「中小企業事業主」の範囲とは?
キャリアアップ助成金の詳細を調べると、全てのコースで中小企業事業主であるか大企業事業主であるかで助成額が異なります。中小企業事業主の方が大企業事業主よりも助成額が大きいので、自社がどちらに区分されるのかを確認する必要があります。
中小企業と大企業の区分は、「資本金の額・出資の総額」による企業規模によって決められますが、資本金等の無い企業の場合は、「常時雇用する労働者の数」によって判定します。いずれも支給申請時点における金額と人数になります。以下のように表にまとめたので確認してみてください。
≪資本金の額・出資の総額≫
| 額 | |
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 |
≪常時雇用する労働者の数(※)≫ 資本金の額・出資の総額が無い場合▼
| 人数 | |
| 小売業(飲食店を含む) | 50人以下 |
| サービス業 | 100人以下 |
| 卸売業 | 100人以下 |
| その他の業種 | 300人以下 |
「キャリアアップ助成金」の支給対象となる事業主の条件とは?


キャリアアップ助成金の支給対象となる事業主には、条件が設けられています。各コースの詳細を見ていくとコース毎に支給対象となる事業主の要件は異なるので、ご自身の事業所で申請したいコースの要件に該当しているかを確認することが必要です。しかし、全てのコースに共通した要件もあるので、ここでは入口となる「全コースに共通する要件」をまとめました。
【支給対象となる事業主(コース共通)】
以下全てに該当することが必要です。
-雇用保険適用事業所である。
-雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を置いている。
-適用事業所ごとに、対象労働者に係る「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局長へ提出している。なお、「キャリアアップ計画書」の内容(実施するコース)に支給申請を検討している「講ずる措置」を記載していない場合は、取組実施日の前日までに当該措置について記載した「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出している。
-該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件・勤務状況および賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにしている。
-「キャリアアップ助成金」の趣旨をよく理解し、趣旨に沿った取組を実施していること。
参考サイト:厚生労働省HP キャリアアップ助成金 助成金支給要領


「キャリアアップ助成金」の申請の流れ
ここでは、どのような流れで「キャリアアップ助成金」の申請をしていけばいいのか解説します。「キャリアアップ助成金」の支給申請は、窓口への持参、郵送または電子で申請することができます。それぞれの方法で管轄の都道府県労働局へ提出します。電子申請の場合はGビズIDを取得した後、「雇用関係助成金ポータル」を通して手続きを行います。
大まかな流れとしては、(1)キャリアアップ計画書の作成・提出⇒(2)就業規則等の改定・取組の実施⇒(3)支給決定、となります。ポイントは、就業規則等の整備や取組実施前に「キャリアアップ計画書」の作成を行い、事前に管轄の労働局へ提出しておく点と取組後6カ月の賃金を支払った日の翌日から起算して2カ月以内に申請をする必要がある点です。
正社員化支援に関するコースと処遇改善支援に関するコースに分けて申請の流れも異なります。以下、両方のコースの流れを解説します。


≪正社員化支援に関するコースの申請の流れ≫
≪処遇改善支援に関するコースの申請の流れ≫
(※)転換日の6か月以前から「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けていること


「キャリアアップ助成金」を受給できない事業主とは?
厚生労働省が公表しているキャリアアップ助成金のパンフレットによると以下いずれかに該当する場合は助成金を受給できないので注意が必要です。
≪「キャリアアップ助成金」を受給できない事業主≫
-支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(滞納がある場合も滞納金を全て支払い終えていれば受給可能。自社で滞納が無いか助成金の申請前に労働局へ確認することをおすすめします)
-支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
-性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主や暴力団と関わりのある事業主。暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
-支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
-支給申請時または支給決定時に雇用保険適用事業所の事業主でない(※)事業主
(※)雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合(吸収合併等による統廃合や雇用保険の非該当承認を受けている場合を含む)等を指します。
キャリアアップ助成金のよくある質問


ここでは、キャリアアップ助成金に関するよくある質問をまとめました。助成金では、それぞれの企業様にとって細かい質問なども出てくると思うので、不安な場合は助成金の専門家に相談すると心強いでしょう。


Q. 外国人労働者はキャリアアップ助成金の対象になりますか?
A.正社員化コースにおいて外国人技能実習生については、支給対象外です。また、EPA受入れ人材として、看護師・介護福祉士試験合格前の者についても、支給対象外です。その他の処遇改善支援コースについては申請ができます。
Q.支給申請期間中に対象者が退職してしまった場合はどうなりますか?
A.会社都合での退職(解雇等)の場合、助成金の支給対象外になります。ただし、本人都合による退職の場合や天災などやむを得ない理由などであれば助成金の対象になります。
Q.従業員が1名しか居ない事業所でも助成金の申請はできますか?
A.事業所が雇用保険の適応事業所であれば、従業員が1名しか居ない場合でも申請は可能です。雇用保険の適応事業所でない場合でも手続きを行った後であれば助成金の申請をすることができます。
Q.申請や要領を理解するのが難しいのですが、代行してもらえるサービスはありますか?
A.助成金は、社労士が申請代行をすることができます。助成金申請に慣れている事務所等へ相談するのも良いでしょう。
Q.1人のキャリアアップ管理者が複数の事業所のキャリアアップ管理者を兼ねることができますか。
A. キャリアアップ管理者は、雇用保険適用事業所ごとに設置する必要が あることから、複数の適用事業所のキャリアアップ管理者を兼ねることはできません。複数事業所で兼務していた場合には、いずれか一方のみが有効となります。
Q. 労働者が10人未満の事業所の場合、就業規則の作成義務はありませんが、それでも就業規則を作成し、必要な規定を整備しなければならないのですか?
A.労働者が 10 人未満の事業所の場合、就業規則の作成義務はありませんが、本助成金においては「労働者が確認できる客観的な規定に基づいて」取組を実施することが必要です。そのため、本助成金のうち、就業規則等への規定が必要なコースを実施する場合には、企業規模に係わらず就業規則又は労働協約を作成し、必要な規定を整備した上で労働者に明示し、その規定に基づいて取組を実施する必要があります。
ただし、10 人未満の事業所が就業規則を作成する場合には、事業所内周知は取組日までに実施の上、①支給申請前に所轄の労働基準監督署長に届け出るか、②就業規則の周知実施について事業主と労働組合等の労働者代表者の氏名等を記載した申立書を添付することが必要です。


まとめ:「キャリアアップ助成金」を上手に活用しよう!
「キャリアアップ助成金」について理解が深まったでしょうか?「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の処遇改善や正規雇用化を促進するため、厚生労働省が設立した制度で、非正規雇用労働者を正社員にする制度や処遇を改善する制度を整備し、実際にその制度を実行した場合に助成が行われます。労働者にとっては雇用の安定と処遇の改善につながり、事業主にとっては、労働者の意欲や能力向上を通じて、優秀な人材の確保と会社全体の生産性が向上するので、労働者・企業の両方にメリットがある制度と言えます。
キャリアアップ助成金には、7つのコースがあり、各コースの助成額は、企業規模(中小企業か大企業か)や、対象者が「重点支援対象者」であるか、あるいは賃金の増額率など、細かく複雑な要素によって決定されます。一般的に、中小企業事業主の方が大企業事業主よりも助成額が大きく設定されています。
キャリアアップ助成金の申請には、「キャリアアップ管理者」の設置、「キャリアアップ計画書」の事前提出が必要であったり、支給申請書の提出など定められた手続きが必要です。
複雑な申請を確実に進めるために
キャリアアップ助成金は、企業・労働者ともに魅力的な制度ですが、多岐にわたるコース、複雑な助成額の計算、申請手続きは、専門知識がないと非常に分かりにくいと感じられるかもしれません。助成金を申請したいものの人手や事務負担がかかる場合には社会保険労務士(社労士)が申請を代行することが可能なので、助成金申請に強い社労士へ相談してみるのも良いでしょう。










